発表プロジェクト概要
先進技術の社会影響評価(テクノロジーアセスメント)手法の開発と社会への定着
城山英明(東京大学大学院公共政策学連携研究部 教授)
テクノロジーアセスメント(TA)は、技術の社会導入前にその正・負の影響を評価し、政策決定を支援する事を目的とする。日本では断片的評価等は行われてきたが、多様な社会影響を考慮した包括的TAが定着していない。そこでまず、政策過程論の観点から日本のTAの歴史を分析する。次に、多様な関係者の視点を組み込む問題構造化の概念に基づいたTA手法を構築する。最後に、新手法の社会定着に向けた制度構築・運用上の提言を行う。
政策形成対話の促進:長期的な温室効果ガス(GHG)大幅削減を事例として
柳下 正治(上智大学大学院地球環境学研究科 教授)
本研究開発プロジェクトは、科学者/専門家と社会の構成員(ステークホルダー)の参加の下に推進する。
温室効果ガス(GHG)大幅削減の長期シナリオをきっかけとした科学者/専門家との応答も含めて、ステークホルダーがGHG大幅削減問題に関して今の段階から討議を尽くしておくべきテーマを主体的・自律的に決定し、当該テーマについて熟慮及び対話を行い、その結果を社会への発信として集約する。このことを通じて、社会的意思の形成の可能性を模索する。この熟慮及び対話の社会実証の場・機会として「低炭素社会づくり『対話』フォーラムを開催する。
本プロジェクトは、このフォーラムの結果に対する分析・評価を踏まえ、長期的GHG大幅削減に向けて我が国として継続的に実施していくべき科学と社会との間、また社会の間での熟慮と対話を可能とし、社会的意思を形成していくことを可能とする機能(場及びそのツール)の提案を行う。またその際に、その機能の社会実装に向けての方向と課題も提案する。
市民と専門家の熟議と協働のための手法とインタフェイス組織の開発
平川秀幸(大阪大学コミュニケーションデザイン・センター 准教授)
科学技術に関する多様な主体の「公共コミュニケーション」を支援するための「インタフェイス組織」を大学に設立し、他大学にも移転可能な事業モデルとして示すことを目的として、特に専門家と市民の関の「熟議」と「協働」のための手法を開発し、既存の手法と合わせて手法ライブラリを整備する。同時に、組織の運営基盤の研究開発を行い、総合的な公共コミュニケーション支援を行う体制を構築する。
地域主導型科学者コミュニティの創生
佐藤 哲(長野大学環境ツーリズム学部 教授)
地域社会の環境問題解決への取組の中で、地域社会に常駐するレジデント型研究機関・訪問型研究者・ステークホルダーの相互作用を通じて、科学者が問題解決型に変容しつつある実態を把握する。科学者とステークホルダーが参加する「地域環境学ネットワーク」を形成して、ステークホルダーと科学者の協働のガイドラインと、ステークホルダーが参加する科学研究の評価手法を構築し、地域社会による主体的な問題解決への貢献を使命とする科学者コミュニティを創生する。
海域環境再生(里海創生)社会システムの構築
柳 哲雄(九州大学応用力学研究所 所長/教授)
過去の沿岸域開発が社会に与えた影響を、社会との関係から明らかにするとともに、今後行おうとする里海創生事業において、周辺住民のニーズが反映できる事業実施手法を提案する。また、各地で進められている里海創生活動の実証例を類型化し、その成果を検証しつつ、関係者にその情報を提供し、沿岸域開発に関わるTA(技術アセスメント)、SEA(戦略的環境アセスメント)のあり方について、環境の保全・創生(再生)という視点から、新たな提案を行う。
森林資源のエネルギー化技術による地方の自立・持続可能な地域経営システムの構築
那須清吾(高知工科大学社会マネジメント研究所 教授)
高知県の様な高騰するエネルギー資源に依存し、衰退する林業・農業を抱える地域を対象に、地方の「環境経営」「農業と林業の活性化」「エネルギーの自立」による地方の自立・持続可能な地域社会の経営システムの構築を目的とし、かつ、様々な分野を統合したマネジメント機能の実践的方法論を提示することで、技術を社会に生かす「統合の科学」の発展を目指す。
多視点化による「共有する医療」の実現に向けた研究
行岡 哲男(東京医科大学 救急医学講座 主任教授)
救命処置を要する患者は意識不明のことも多く、時間的制約から通常の「説明と同意」は例外視されてきた。医療を情報共有に基づく当事者間の納得を目指すプロセスとし、これを「共有する医療」と表現する。救命救急医療においてこそ、この達成が必要である。本プロジェクトは情報技術とコミュニケーション分析の融合により、市民参加を得て救命の現場における「説明と同意」のための新たな基本モデルの提示を目指すものである。
地域に開かれたゲノム疫学研究のためのながはまルール
明石圭子(長浜市健康福祉部健康推進課 副参事)
「ながはま0次予防コホート事業」の主要素であるゲノム疫学研究において、個人情報保護や倫理問題に対処するための「ながはまルール」を作成する。
作成にあたり
①研究協力者にとっての個人情報保護、
②疫学研究の地域づくりへの活用、
③長浜版バイオバンクの法整備の3点に視点を置き、
地域に開かれたゲノム疫学研究ルールの基準を提案する
*Zeroji prevention:
Modifying daily habits effectively to avoid illnesses to which you may be susceptible, based on analysis of the genes inherited from your parents and other approaches.
